軍畑大橋からできる限り遊歩道を利用しながら、御岳渓谷・白丸ダムを通って昭和橋までの約15kmのコースである。途中山登りをするような道もある。コースのルートを図-4.6に示す。2.5万分の1地形図は武蔵御岳・奥多摩湖である。
JR青梅線軍畑イクサバタ駅から左岸の青梅街道を約20分行くと「御岳渓谷遊歩道入口」(写真-4.40)の標識があり、それを下る。遊歩道はよく整備されており、川のそばの林の中を快適に歩ける。以前歩いた時にはなかったが、適当な間隔で距離標識が新設されており、海からの距離とともに標高も記されている。これによって計算すると、この付近から上流の昭和橋までの河川勾配は10/1000程度となる。
人道橋の楓橋・鵜の瀬橋を過ぎると、道の脇に「お山の杉の子」の歌詞と音譜が碑となっている。説明によると佐々木すぐるが昭和19年(1944)作曲し、吉田テフ子作詞とのことである。
御嶽小橋(写真-4.41)の付近は御岳渓谷と呼ばれ、名水百選に指定されている景勝地である。
進むと「旧御岳万年橋の跡」の説明看板に次のように書かれている。「御岳万年橋は多摩川上流域に三つある万年橋のひとつで御岳山参詣者には大事な橋である。中里介山作の大菩薩峠の物語の中でいくつかの場面に登場する。」とある。
奥多摩フィッシングセンター(写真-4.42)は多摩川の一部を釣り場にされていて、沢山の丸太橋で自由に渡れるようになっている。進入はこちらの青梅街道側からで車1台が通れる程度のもぐり橋で渡る。
御岳美術館・せせらぎの里美術館を過ぎると遊歩道はなくなり、青梅街道となる。片側であるが歩道が付いている。
奥多摩大橋のすぐ手前に支流大丹波川の大正橋(写真-4.43)がある。「大正橋の由来」という看板があり、「古くは大丹波川を丸太や板で渡っていたが1614年に架橋。橋の構造は山梨県大月市にある猿橋に似た肘木橋と呼ばれる橋長7間(14.5m)幅員4尺(1.2m)の木橋。その後約20年毎に架け替え。大正8年(1919)強固で広い橋に架け替え、これを機に大橋から大正橋に改名。その橋は木鉄混合のトラス橋で橋台は赤いレンガと御影石を使用。その後昭和11年に鋼アーチ橋に、昭和54年(1979)にはコンクリートアーチ橋。大正時代の橋台のイメージを中心に橋の化粧直しを実施。」と書かれている。
青梅マラソン30k折り返しの標識を過ぎ、古里コリ駅から左折すると万世橋で、これを右岸に渡る。
渡るとすぐ脇道があり、右折して吉野街道から分かれる。この道は車の通行は少なく道なりに寸庭橋に向かう。途中東京都交通局発電事務所管轄の寸庭横抗の抗口がある。白丸ダムの導水路に関係する施設であろうか。
寸庭橋の右岸上流たもとに階段があり、遊歩道に下りられる。二つ目の沢を過ぎると山登りが始まり。上の休憩小屋まで約30分登り続ける。両方向とも観光で歩いている人に多く出会い、安全な道である。休憩小屋から多摩川を望めば将門大橋や鳩ノ巣大橋が見える(写真-4.44)。
道なりに下れば雲仙ウンセン橋で、再び左岸に渡る。案内標識にしたがって川に下れば鳩ノ巣渓谷(写真-4.45)の遊歩道である。「鳩ノ巣の由来」は、「1657年の江戸であった振袖火事と呼ばれる大火に対する復旧用材を調達する人夫達の飯場に二羽の仲睦ましい鳩がいたこと」とある。
青梅街道の花折トンネル入口から左折する道に白丸ダム魚道入口の標識がある。
白丸ダム(写真4.46)は河口から79kmの地点にあり、東京都交通局管理の発電用ダムである。重力式コンクリートダムで堤高30.3m、堤頂長61m、総貯水容量892,900㎥、昭和38年(1963)完成である。発電所は、ダムから放流する観光用放流水を有効利用するため左岸地下40mに設置された。落差14m、最大使用水量5.3㎥/sで、最大発電出力は1,100KWである。
このダムには大規模な魚道(写真4.47)があり、平成14年(2002)に完成している。上流の白丸調整池と下流との高低差は27mで、左岸につづら折れ式の明かり水路(206.8m勾配1:10)とトンネル(150m)で遡上できる仕組である。明かり水路部には3箇所の休憩プールがあり、階段式魚道(アイスハーバー型)と潜孔式魚道があるらしい。設計対象魚種はヤマメ、サクラマス、アユであるとのことである。白丸ダム魚道管理棟から立坑を下りて魚道の見学ができ、そのままダム天端に行ける。
ダム天端を右岸に渡るとダム湖沿いに遊歩道がある。これはダム管理用の巡視路である旨の看板があるが、格好の遊歩道である。上り・下りの多い道であるが、対岸青梅街道の車のことを思えば快適である。
数馬峡橋を過ぎてしばらく行くと人道トンネルがあり、遊歩道は終わる。
氷川発電所の横から国道184号に上がり、海沢大橋手前から奥多摩駅方面に向かう。
対岸にあるもえぎの湯には、こちらから人道橋で渡れるようである。この温泉の泉源は奥多摩温泉、泉質はメタほう酸・ふっ素、泉温19℃とのことである。有料¥100ではあるが足湯もある。
終点は昭和橋(写真-4.48)としたが、少し左岸上流の日原川合流付近の河原でムササビの観察ができるとのことである。奥氷川神社境内の木に巣があるらしい。ムササビは時速50km、滑空距離最大130mと言われるが、観察できることを期待するほどには出現してくれないらしい。
ここからJR青梅線の終着駅である奥多摩駅に向かう。