(5)島村渡船跡・神流川コース

 上武大橋右岸堤防上を行き、島村渡船の乗り場跡、備前渠を見た後、烏川で利根川から外れ烏川・神流川を経てJR高崎線新町までのコースである。約17.2kmである。このコースのルートを図-6.6に示す。2.5万分の1地形図は深谷・本庄・伊勢崎・高崎である。

図-6.6島村渡船・神流川コースルート図
図-6.6島村渡船・神流川コースルート図

 

JR高崎線深谷駅から深谷市コミュニティバスの北部定期便に乗り、渋沢栄一記念館の2つ先の下手計シモテケで降りると約30分で上武大橋である。このバスは便数が少ないので予め時刻を調べておくのがよい(048-554-2255)

  上武大橋に行き、右岸の利根川自転車道を上流に向かう。

  上武大橋(写真-6.43)は平成30(2018)に開通したばかりの長さ888mの鋼箱桁橋である。ここは江戸時代から北越街道のルートで官営の中瀬の渡しがあった。現在解体中の旧橋(写真-6.44)は昭和9(1934)に開通した長さ894.7mのワーレントラス10連橋である。

利根川で南北に分断されていた群馬県伊勢崎市境島村では島村渡船(写真-6.45)を市が管理・運航していたが、下流に上武大橋ができて利用が減り廃止された。

写真-6.43上武大橋
写真-6.43上武大橋
写真-6.44上武大橋解体中旧橋
写真-6.44上武大橋解体中旧橋
写真-6.45島村渡船右岸船着場跡
写真-6.45島村渡船右岸船着場跡

 

 島村渡船のすぐ先にスーパー堤防があり、そこに群馬ロータリークラブ寄贈の円形テーブル状のモニュメント(写真-6.46)がある。外周にはここから見える山並が描かれ、中央には明治18(1885)の測量図がある。しかし説明が無いので、寄贈・設置の目的は不明である。

  本庄第一高校は甲子園出場経験のある野球強豪校であるらしい。

  DOWAハイテック(写真-6.47)は太陽光パネルの電極の素材を生産している工場である。ここで使っているヘキサメチレンテトラミン(HMT)の処理が原因で、平成25(2013)5月に下流の浄水場でホルムアルデヒロ濃度が国の基準の23倍検出される事件があった。HMT本体は水質汚濁防止法の規制対象外の物質で、浄水の過程での塩素と反応してホルムアルデヒドが生成されるらしい。法的責任は問えないらしく、16県が出した3億円の賠償はDOWAハイテックが拒否したことまで新聞報道を見た。

備前渠(写真-6.48)は埼玉県最古の農業用水路である。江戸幕府の命令により、関東代官伊奈備前守忠次が計画したことから備前と命名されたとのことである。総延長は23kmで、渠というのは堀、人工河川などの中国風の呼び方であるらしい。

写真-6.46円形テーブル状モニュメント
写真-6.46円形テーブル状モニュメント
写真-6.47DOWAハイテック工場
写真-6.47DOWAハイテック工場
写真-6.48備前渠
写真-6.48備前渠

 

坂東大橋の坂東は相模の国(現神奈川県)の足柄・箱根以東の呼び名で、利根川は日本河川の長男として坂東太郎と呼ばれている。架橋以前は船を繋いだ舟橋で、当初は鉄道・道路併用で計画されたが昭和恐慌で鉄道はなくなり道路専用橋となった。昭和6(1931)に開通した曲弦ワーゲントラス型鉄橋の2段構造で、当時利根川に架かる最長の橋であったことから坂東大橋と命名されたとのことである。このモニュメントが左岸伊勢崎市のたもとにある。昭和16(2004)供用を始めた新橋は長さ936mの斜張橋(写真-6.49)で、飛び立つ白鳥をイメージしたデザインとのことである。

  ダム放流注意の看板があり、上流27.0kmに水資源機構の下久保ダムがある。

 ばらく行くと右下に向かう分岐がある。間違って御陣場川の右岸に直進しやすいが、それを右に下りれば御陣場川の月見草橋で渡って利根川右岸堤防に戻る。

  道なりに烏川右岸に入り、さらに神流川沿いとなる。

  神流川橋の新橋が100m下流に建設中であった。

  神流川橋(写真-6.50)は国道17号に架けられている。橋の両岸にあるモニュメントは見返り灯籠と呼ばれ、そのいわれも記されており渡河の際の常夜灯である。

  神流川を遡ると、JR高崎線の橋梁がありさらに上流に水資源機構の下久保ダム、日航ジャンボ機墜落現場である御巣鷹山、東京電力の神流川発電所がある。

神流川橋を渡ると左岸たもとに神流川古戦場跡碑(写真-6.51)がある。1582年信長の死の報をうけて滝川一益が京に向かおうとする隙をついて北条氏の軍勢が攻め入った時の戦いで神流川合戦と呼ばれ、両軍合わせて4000人が戦死し、戦国時代関東最大の激戦であったと言われる。

写真-6.49坂東大橋
写真-6.49坂東大橋
写真-6.50神流川橋
写真-6.50神流川橋
写真-6.51神流川古戦場跡碑
写真-6.51神流川古戦場跡碑

 

以後国道17号を陸上自衛隊新町駐屯地の横を通り、見通し灯籠や田口嘉六郎翁の碑を見ながらJR高崎線新町駅に至る。